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3つのカテイを大事にするプロレスラー

 
 今回お話を聞いたのは、プロレスラーの内田祥一さん。

 イベント3回目でようやく私の得意分野であるスポーツと言うカテゴリーにいる方に話を聞くことができる。とは言っても、プロレスを一度も見に行ったことがないばかりか、正直私はプロレスやボクシングなどの格闘技が嫌いである。
どうして憎んでもいない人を殴ったり、蹴ったりできるのであろうか。
どうして痛めつけ合い、相手を倒すことが目的のスポーツに熱狂できるのであろうか。
そう思っていた。そんな疑問を解消してくれるかもしれないと期待していた。

 彼は腰低めにステージに登場した。なんだがイメージと違う。プロレスラーと言うのは少し威張っていると感じるくらい、胸を張って堂々と出てくる姿を想像していた。

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「僕、人見知りなんです」
人見知りのプロレスラーは実際多いという。人見知りなのに人前で戦う?一体、プロレスラーとは何の職業なのであろうか。スポーツマンなのか、格闘家なのか?その問いに彼はこう答えた。

「基本、表現者と思っています」
俳優や芸人と同じジャンルであり、リングというある程度作られた舞台の上で、お客さんに何を伝えたいか、表現したいかが重要だという。『人見知りの表現者』がプロレスを通じて何をしようとしているのだろうか、私はとても楽しみになっていた。

そして、いろんな話を聞いて感じたのは、内田祥一というプロレスラーは3つの「カテイ」を大事にしているということだった。


☆1つ目のカテイ
 
 プロレス団体に入門したのは23歳、決して早い年齢ではない。高校を卒業して大阪に出てきて仕事を始め、生活が落ち着いた頃に「やりたいことをやりたい」と思ったそうだ。
 その思いにはこんな背景がある。小・中学生の時に部活でサッカーや水泳をやっていたが、家の生活が苦しかったため、必要な用品や遠征費などを親にお願いすることができなかった。それが理由でいじめられたこともあり、居づらくなってこっそり辞めてしまった。やりたいことができなったという思いが、もともと好きだったプロレスをやってみようという決断につながった。とはいえ、当時特に体格が良いわけでもなく、体を鍛えていたわけではなく、ケンカが強かったわけでもなかった彼は、記念受験くらいの気持ちで受けた。試験課題の腹筋50回×2セットや腕立て50回×3セット、スクワット500回などは、もちろん出来なかった。が、合格した。彼が言うには、当時人がおらず雑用をする人間がいなかったため、その要員で合格したらしい。

 入門してから、給料はほとんどないが、団体の雑用をしつつ練習をする毎日が始まった。社長の送り迎え、リング準備、掃除、炊事、雑用をこなし、先輩が寝るまでは寝られないという、完全な上下社会の「一番下」となった。先輩からの嫌がらせに腹を立てることもあったが、なんとか乗り越え、デビューを迎えた。今でこそある程度知られているが、デビューが決まる前に、プロレスがエンターテイメントであることを教わった。(つまり筋書きもあると言うこと)最初からとにかく受身の練習が多かったため、不思議に感じていたことの謎が解けた。デビュー戦は道場長が相手であった。もちろん思いっきり負けた。

 彼が最初に所属していた大阪プロレスは一般的にはエンターテイメント性の高い団体だが、タイガーマスクや武藤敬司に代表される華のあるレスラーには特に憧れていなかった。マスクは被らず(団体から被らなくてもいいと言われた)、派手なパフォーマンスもせず、やられてもやられても立ち上がる根性論を押し出した泥臭いスタイルを貫いていた。プロレスの考え方は人それぞれであり、どんなスタイルだったとしても、「みんなが喜んでくれるから」がベースにある。本当に憎しみ合っていたらいい試合にはならない。もちろん技を掛けられたらダメージを受けるが、実は相手の見栄えが良くなるように心がけていて、そこには相手への信頼感があるからこそ。心の中での会話があり、お互いの技量が必要なのだ。プロレスラーによって段取りを詳細に決めるタイプと、フィーリングで行こうというタイプがいるらしい。彼は中間のスタンスを取っていて相手のタイプに合わせていくように心がけている。経験や性格によって、そして対戦することで、その人のタイプは分かってくるそうだ。以前3対3の6人タッグが組まれた試合で、6人中5人が人見知りだった時には、お互いが気を遣いすぎてさすがに微妙な雰囲気になったという。
 
 それから2年ほど大阪プロレスにいたが、大きなケガをしたため団体に迷惑をかけてはいけないと一旦離れ、フリーとして復帰した。彼の得意技はダイビングヘッドバッド。大阪プロレスを離れるきっかけとなった技は皮肉にもこれであった。ケガは承知の上がこの世界。相手に文句を言うこともなければ、恨むこともない。相身互いなのだ。
 現在はダブプロレスに所属し活動をしている。以前チャンピオンとして在籍していたこともあり、フリーの時に使ってくれていた義理がある。また、デビューするときにお世話になったたくさんの人々に、選手生命があるうちに恩返しがしたいと活動を続けている。
 彼は自分の人生の【過程】をプロレスで表現している。
部活を思い切りできなったこと、記念受験のつもりが合格して入門・デビューしたこと、ケガをしてフリーになったこと、すべてが今の内田祥一を作っている。

 『見に来てくれたお子さんや元気のない人が、「元気もらった」とか「やられても向かっていく姿勢に元気が出た」と言ってくれた時、自分の言いたかったことが伝えられたんだなと思って、嬉しい。若い人に向けて、勝ち負けも大事やけど、それに至る過程、諦めずに向かっていくことに価値があるんやで、と伝えることができたらいいなと思っています。』


☆2つ目のカテイ
 
 内田祥一と言う人間は、プロレスだけでは語りつくせない。いろいろ「やらかしている」男である。

 彼は高校卒業後、大阪でバイトや契約社員で生計を立てていた。特に生活が貧窮していたわけではないが、20歳の時にマグロ漁に行くことを決意した。マグロ漁と言えば、借金まみれの人が行って全額返済して帰ってくるイメージがあったので、借金ゼロの自分が行けばとてつもなくお金が貯まるんじゃないか、起業できるんじゃないか、と一攫千金を夢見た。
 しかし彼が行ったのは、近海マグロであった。基本、儲かるのは遠洋マグロで、そのからくりを言うと、1年間ずっと船に乗っているとお金を使わないので貯まるだけだそうだ。一方、近海マグロは2週間に1回の頻度で帰ってくるため、その時にお金を使ってしまう。彼は学生ローンの返済もあったので貯めることが出来なかった。彼が乗った船は本来マグロを釣る漁船じゃなかったこともあり、なかなか釣れなかった。釣れたとしても、ビンチョウマグロは燃料代に消え、キハダマグロで10~30万で儲けにならない。本マグロで200~300万になるが、ほとんど釣れない。途中から辞めたいと思っていたが、船長が王様として君臨する船では、○○が死んだらしいという噂がいつもあったので、なかなか踏み出せなかったし、こっそり逃げ出すのは嫌だった。半年後、遂に行動を起こした。入念な準備の上、夜中に荷物を運び出し、船長と機関長に辞めることを告げた。もちろん承諾されなかったし脅されたが、意思を貫き強引に帰ってきた。
 彼はマグロ漁に行く前に、ある【仮定】を立てていた。

「もしかしたら死ぬかもしれん」、帰ってきたときは「死んでいる」か、「大金持ちになっている」かのどちらかだと。
 なので、家具などは全て友達にあげてから旅立った。家賃だけは払い続けていたため、帰る家はあったが、何もない。1年半、通信業の営業で働き、歩合制で稼いで何とかなった。初めからそっちのほうが稼げていた気もするが、これも彼の過程の一つとなっている。

 その後、入団テストを受けるわけだが、そこにもエピソードがある。彼はテストを受けた後、またこんな仮定を立てた。

「もしプロレスラーになったら、最悪事故で死ぬかもしれん」

 そこでこれまでお世話になった人たちにご馳走をして回ることにした。その当時、酒気帯び運転の取り締まりが厳しくなり始めた頃で、お酒を飲んで原付で帰っていたら、案の定捕まった。警察官に罰金10万円と言われ、なんだか払うのが悔しかった彼は、罰金相当の日数拘置所に入れば帳消しになるという話を聞き、入ることにした。1日5000円の計算で20日間入らなければならないが、前科は付かないという。その拘置所内でトレーニングをして、身体作りが出来るとも考え、一石二鳥の得した気分になっていた。が、実際は勝手なトレーニングなど許されず、運動は週に2回のみ。むしろ体は弱っていった。消灯の時間には「かあさんの歌」(♪かあさんが夜なべをして)が流れ、母親に手袋を編んでもらったことのない彼も自戒の念に駆られたという。
しかも、その拘留中に入団テストの結果発表があり、彼は合格していた。大阪プロレスのHP上には「探しています」と書かれ、尋ね人状態であったので、身体の弱った彼が入門した時には先輩レスラーに「今まで何してたんや」と聞かれる始末であった。

 彼はとにかく「死」を仮定する男である。
 現在、プロレスラーとして戦う傍ら、バーの経営もしている。ある日彼の店のお客さんが同じビルにあるぼったくりバーに引っかかってしまった。高額請求をされ、監禁されているとの連絡が入り、助けに行った。その際、やはり最悪「死ぬ」ことも考えて、もし20分以内に何の連絡もなかったら警察に通報するように知人に頼んで出ていった。よく考えてみたら、プロレスラーであるムキムキの男性が乗り込んで来たら、相手の方が逃げ出すだろうが…。結局、死の危険はなく、警察も来て話し合いとなった。事情聴取で、警察官に職業を聞かれ、「プロレスをやっていますが、収入のほとんどはバーです」と答えると、「じゃあ飲食店勤務ね~」と言われた。少し切なさを感じながらも、こう仮定した。
 
 「もし犯罪を起こしても、プロレスラーとして名前が出ないなら、プロレスに迷惑をかけることがない」と、安心もした。

 これは笑い話でもあるが、プロレス業界でも、芸能界でも当たり前に言えることでもある。「その道で飯を食っていく」ことを、誰しもが最初に目指す。名前が売れていない芸人やタレント、スポーツマン、ダンサー、歌手等は、ほとんどの場合ギャラが安い。プロレスでいうと1試合あたり10,000~15,000円だそうで、毎日戦っても30万程度にしかならない世界。しかも、ケガは当たり前で、命の危険もある。そんな中で戦うプロレスラー達の、言葉にならない(できない)叫びが試合の中に凝縮されている。

 『どの選手にも個性と人生があるので、もし、試合の中にそれぞれの生き様や本質を見ることが出来たとしたら、面白いと思います』と彼は仮定した。


☆3つ目のカテイ
 
 3つのカテイの中で、彼が一番大事にしているものは、間違いなく【家庭】だ。
 
 マスクマンに興味のなかった彼は最近、別の意味でマスクに興味を持ち始めている。プロレスラーは危険な職業であるため、保険に入るには高額を払う必要がある。家庭がある以上、保険は絶対である。もし、マスクを被っていたら、本名を名乗らないため安く保険に入れるのでは、と考えているのだ。1回引退して、マスクマンとして…と家庭のためにプロレスラーとしてのキャリアは厭わない彼の思いは、たぶん正しいはずだ。
 さらにその思いは現在のコスチュームにも表れている。新しいものを作りたいが、4人の子供を養っていて金銭的に苦しいため、「クラウドファンディング」で出資金を募った。5万円出資してくれた人には、特典としてコスチュームのデザイン権を与えるという条件を付けた。結果、全体では10万円ほど集まり、5万円出資してくれた人もいた。その方はアスリートに仕事を斡旋したり、引退後のキャリア支援をしたりする会社をされているそうだ。その方のアイデアで「応援されている感」を出した方がいいと、ズボンに協賛やスポンサーの名前を入れた。加えて、彼は家庭円満を願って、奥さんとお子さんの名前も入れた。喜んでくれるだろうと意気揚々と報告すると、奥さんに

 「個人情報をさらすな!」と一蹴された。

 彼は家庭と言うリングでは負けっぱなしである。しかし、家庭がすべてのエネルギーの源となっていることも確かだ。

 プロレスだけでは生活が苦しく、バーを深夜までやって体力がキツいけど、家庭でも詰められるという四面楚歌の状況をどう打破していくのか。三つのカテイを大事にしながら、これからも内田祥一は戦い続ける。

私はその生き様を見るために、プロレスに行きたいと思った。


【おまけ~実演コーナー】
チョップ
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叩く方が手が痛かったです・・・


スリーパーホールド
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失神に持ち込める技。


クラウドファンディングで作ったコスチューム
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ズボンにはスポンサーと、ご家族の名前が。

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手首に巻く、アームカバー(?)もカッコいい!


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イベント終わりには、バーへ出勤した内田さんなのでした。


内田さんの情報はhttp://bar-bbb.com/でチェック!

試合のチケットはkozukuriha.keikakutekini@gmail.com まで。なんじゃこのアドレス(笑)
件名に大会名、日付、枚数を入れて送ってください!


内田祥一さんからチケットを買いましょう!!

8月の大会は終わってしまいました・・・9月以降に行きます!!


フリライターまりお
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プロフィール

まりお

Author:まりお
「“フリ”ライター」高島まりおです。

気になる方へインタビューし、記事を書いていきます。
その他、面白いこと、楽しいこと、興味あることを中心に、綴っていきます。

月一でインタビューイベントを開催しています!
「フリライターまりおの取材してるふり。」

イベントと記事(ブログ)連動していますので、こちらも是非チェックをお願いします。


目指すは…Sex And The Cityのキャリーブラッドショー!

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